【定期昇給】と【ベースアップ】の違いとは?例文付きで使い方や意味をわかりやすく解説

定期昇給とベースアップの分かりやすい違い
定期昇給とベースアップは、どちらも賃金上昇に関する用語ですが、その性質と目的が大きく異なります。
定期昇給(定昇)は、年齢や勤続年数の増加に伴う個人単位の昇給で、賃金表に基づいて自動的に行われます。一方、ベースアップ(ベア)は、賃金表自体を書き換えて全従業員の賃金水準を引き上げる制度です。
春闘などの労使交渉では、この両者の違いを理解することが、適切な賃金交渉を行う上で重要となります。
定期昇給とは?
定期昇給とは、従業員の年齢、勤続年数、経験の蓄積に応じて、毎年定期的に行われる昇給制度です。略して「定昇」と呼ばれます。多くの日本企業で採用されており、賃金表(給与テーブル)に従って、1年経過するごとに自動的に1号俸上がるなどの仕組みです。年功序列型賃金制度の中核を成す要素で、従業員の生活の安定に寄与します。
定期昇給の特徴は、個人の成長や習熟度向上を前提とした制度であることです。若年層ほど昇給額が大きく、年齢が上がるにつれて昇給カーブが緩やかになる設計が一般的です。これは、若年期の急速な能力向上と、中高年期の貢献度の安定を反映しています。人事評価により昇給額に差をつける企業も増えています。
近年、定期昇給の見直しが議論されています。成果主義の浸透、人件費の抑制、若手の早期抜擢などの観点から、自動的な定昇を廃止し、評価連動型の昇給制度に移行する企業もあります。ただし、従業員の生活設計への影響が大きいため、慎重な制度設計が求められます。
定期昇給の例文
- ( 1 ) 今年も定期昇給により、基本給が5,000円上がりました。
- ( 2 ) 定期昇給制度により、毎年着実に給与が増えていきます。
- ( 3 ) 人事評価によって定期昇給額に差をつける制度に変更しました。
- ( 4 ) 55歳で定期昇給が止まる制度となっています。
- ( 5 ) 定期昇給の原資確保のため、賞与での調整を検討しています。
- ( 6 ) 若手社員の定期昇給率を上げ、早期の処遇改善を図ります。
定期昇給の会話例
ベースアップとは?
ベースアップとは、物価上昇や企業業績向上などを反映して、賃金表(ベーステーブル)そのものを改定し、全従業員の基本給を一律に引き上げる制度です。略して「ベア」と呼ばれ、春闘の主要な交渉項目となっています。インフレ対応や実質賃金の維持・向上を目的とし、労働組合が要求することが一般的です。
ベースアップの重要性は、従業員の生活水準の維持・向上にあります。物価が上昇しても賃金が据え置かれれば、実質的な購買力は低下します。ベアにより賃金水準全体を底上げすることで、この問題に対応します。また、企業の好業績を従業員に還元する手段としても機能し、モチベーション向上や人材確保にも寄与します。
ベアの実施は、企業の人件費に大きな影響を与えます。一度上げた賃金水準を下げることは困難なため、企業は持続可能性を慎重に検討します。デフレ期にはベアゼロが続きましたが、最近の人手不足やインフレ傾向を背景に、ベア実施企業が増加しています。率だけでなく、額での交渉も行われます。
ベースアップの例文
- ( 1 ) 今春闘で2%のベースアップを獲得しました。
- ( 2 ) 10年ぶりにベースアップを実施し、全社員の士気が上がりました。
- ( 3 ) 物価上昇に対応するため、ベースアップの必要性を経営陣に訴えました。
- ( 4 ) ベースアップにより、初任給も一律に引き上げられます。
- ( 5 ) 競合他社のベースアップ動向を調査し、当社の方針を決定します。
- ( 6 ) ベースアップ原資として、業績好調分の一部を充当します。
ベースアップの会話例
定期昇給とベースアップの違いまとめ
定期昇給とベースアップの最大の違いは、昇給の対象と性質です。定昇は個人の成長に対する昇給で年齢とともに自然に発生しますが、ベアは全体の賃金水準の引き上げで労使交渉により決定されます。
コスト面でも違いがあり、定昇は既定の賃金表に基づくため予測可能ですが、ベアは賃金原資の追加が必要で企業負担が大きくなります。また、定昇は個人差がありますが、ベアは全員一律(または一定率)という点も異なります。
春闘では「定昇+ベア」の総額で賃上げ率が示されることが多く、両者を合わせて従業員の賃金上昇を実現します。企業は経営状況に応じて、両者のバランスを考慮した賃金政策を策定することが重要です。
定期昇給とベースアップの読み方
- 定期昇給(ひらがな):ていきしょうきゅう
- 定期昇給(ローマ字):teikishoukyuu
- ベースアップ(ひらがな):べーすあっぷ
- ベースアップ(ローマ字):be-suappu